Coucou ! ほたです。
クラシックな名作映画 Les Parapluies de Cherbourg 「シェルブールの雨傘」を語学学習として観ました。
お供はこのテキスト。シェルブールの雨傘―仏和対訳シナリオ。
今日はこのテキストを実際に使い終えた感想やこの映画で学べるフランス語について、映画の内容や面白いセリフを交えて紹介したいと思います。
テキスト概要・感想
まず教材の紹介から。
これは映画シナリオを丸々教材にした珍しいテキストで、最初から最後まで全セリフと情景描写がフランス語で載っています。
1987年と1994年に出版されたヴァージョンがあるようで私のはシンプルなセリフと文法事項だけの古い方なのですが、Twitterのフォロワーさんによるとどうやら新しい方には穴埋め練習問題がある模様。ページ数は各99ページ、89ページです。
今やNETFLIXなどで日仏同時字幕を出して勉強が出来るようになりすごい時代だなぁと日々感動していますが、これは教材の形を取っているのでスクリプトに加え文法事項も日本語で細かく解説してくれているのがポイント。
映画のスクリプトなんて果てしなく思えるかもしれませんが、実際テキストを手にしてみると「え?1時間32分の映画の全スクリプトでこんな薄いの?」と感じると思います。
全100ページ未満でしかも片ページは文法解説なので、実質50ページに満たない量。読み物として読むと1日かかりません。
私はこのテキストを一昨年既に一度通しで全部読み込みましたが、実際の映画と突き合わせて読むのは初。全フレーズをテキスト片手に何度も巻き戻しながら映画と一緒に言ってみました。
さすがに一周しただけでオーラルが爆上がりしたということはありませんが、いわゆるミュージカルなので話すスピードがゆっくりで俳優さんの口の形をじっくり見ながら発音できるところがかなり良かったです。フランス人の口の形を見て音を改善するのは個人的にとてもおすすめです。
一度テキストは終えているので文法的にそこまで引っかかる部分が無く音や流れに集中できたのでこの流れが正解だと思いました。
つまり少なくとも先に一度全部読み、文法事項をクリアにしてから映画と突き合わせて2周目にいくのが効果的(多分)
文法も単語群もそれほど難しくありません。テキストまえがきには「初級の前半を終えた段階から入ってもそう困難ではなく…」とあります。まぁ、それはもう少し…中級寄りでは?とも思いますが、条件法がたくさん出てくるからかもしれません。
昔っぽい言い回しなんだろうなぁと思うところが多々あるので、これをそのまま自分の日常会話に持ってこようとはあまり思わなかったです。あくまでフランス語の構文や優しめの口語に慣れる目的という感じ。
量的にもレベル的にも教材としてはライトだと思うのでかなり取り組みやすいと言えます。
映画あらすじ・感想
次に映画自体の話も。
カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した1964年のフランスと西ドイツ合作映画です。脚本・監督ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン。
映画は常に色鮮やか!50年以上前の映画とは思えないです。シーンごとに背景の壁紙と服装の色を合わせているのがおしゃれ。
ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)がとにかく可愛く服のセンスも王道に素敵でそれだけでも多くの女性は好きそうですが、勿論そんなただのファッション映画ではありません。この映画の良さは今更私が多く語ると陳腐になりそうなので簡潔に。
一言で救いのある悲恋。展開はある意味すごく早くて「えー!?」という感じも結構します。本当はもっとジュヌヴィエーヴ、ギー、マドレーヌの感情の機微とか見たいんですけど…全てが唐突。でもミュージカルって元々こんな感じかもしれません。
この有名な主題歌のシーンと、ラストの二人の空気感がぐっときます。
この動画は以前おすすめのフランス語の歌でも紹介しました。
映画は大きく三部に分かれていて大まかなストーリーはこちら。(鑑賞前にあらすじを読みたくない方は飛ばしてください)
第1部 ー シェルブールで傘屋を営む母と二人暮らしの娘ジュヌヴィエーヴは、ギー・フシェと付き合っている。母親は2人の結婚に反対。宝石商のロラン・カサールに娘を嫁がせようとする。そんな時ギーに召集令状が来て、2人は別れ別れになる。 第2部 ー ギーが出征してジュヌヴィエーヴの妊娠が発覚。ジュヌヴィエーヴはギーのことが忘れられずにいるが、結局妊娠していることを承知の上で結婚を申し込むカサールのもとに嫁ぎ、パリに去る。 第3部 ー ギーは帰還しジュヌヴィエーヴを失ったことに苦しむが、優しい娘マドレーヌと結婚し夢だったガソリンスタンドを経営するようになる。クリスマスの晩、何年かぶりにシェルブールを訪れたジュヌヴィエーヴが偶然ギーのスタンドに立ち寄る。 |
参考:シェルブールの雨傘―仏和対訳シナリオ
二人で描いていた幸せな未来の象徴である「子供の名前」とか「ガソリンスタンド」とかのキーワードが、お互いが一緒にいない未来で回収されるのがすごく良いんです。二人は結婚しない、という結末だからこそ心に残ります。
映画のセリフ
いくつか心にとまったセリフをフランス語の文法事項とともに紹介します。これを見ると意外と難しい構文もなく取っ掛かりやすいのが分かると思います。
On ne meurt d’amour qu’au cinéma.
恋で死ぬのは映画の中だけよ。
ギーに召集令状が来て打ちひしがれるジュヌヴィエーヴに対するエムリー夫人(ジュヌヴィエーヴの母親)のセリフです。
ne…que ~しか~ない 否定の制限
meurir de A Aが原因で死ぬ
= On meurt d’amour seulement au cinéma.
Ça ne te regarde pas. – Si, ça me regarde.
叔母さんには関係ないよ。ーいいえ、関係ありますとも。
ギーがどこに出かけるのか母親のように心配する叔母さんとギーのセリフです。
ここの te と me はどっちも叔母さんのこと。regarder は普段「~を見る」という時に使う動詞ですが、物事を主語にして(ここはça) regarder ~に関わる、関係がある という意味になります。
例・Cette histoire ne me regarde pas. この話は私には関係ない。
c’est étrange, le soleil et la mort voyagent ensemble.
不思議なことに、ここでは太陽と死とがいつも一緒なのだ。
戦地からのギーのジュヌヴィエーヴに対する手紙の一節です。
直訳すると「太陽と死が一緒に旅行する」
日常的な言い方というより、手紙だからこその詩的な表現という感じ。
ギーの切迫感が伝わる反面、文章として美しいですね。
Pourquoi Guy s’élogne-t-il de moi, moi qui serais morte pour lui. Pourquoi ne suis-je pas morte ?
何故彼は遠くへ行ってしまったの、彼の為なら死んでもいいと思った私なのに。
どうして死んでしまわなかったのかしら。
妊娠中の体で戦地のギーを想う気持ちと、カサールの結婚の申し出を受けるか悩むジュヌヴィエーヴのセリフです。
moi qui serais と être の条件法現在を使っているのは実際には起こっていない事柄(今も生きている)ことを示す為で「彼の為に死ぬ覚悟もあった(けど実際には死んでない)」ということ。
Elle a beaucoup de toi. Tu veux la voir ?
あなたによく似てるわ。会ってみる?
5年後、雪の降るクリスマスにたまたまシェルブールを訪れたジュヌヴィエーヴとギーが偶然再会するシーンです。
ここの Elle, la はジュヌヴィエーヴの子供(つまりギーの子供)のフランソワーズのこと。
avoir de qqn で tenir de qqn (人の)血を引いてる = 似てる になります。
= Elle te ressemble beaucoup.
まとめ
映画はもちろん、永遠のクラシックで本当に素晴らしい。
これを語学学習としてどうか?と考えると、人による。と言ってしまいますが好き嫌いが分かれそうな勉強法です。ミュージカルに抵抗が無い人、音楽で勉強するのが好きな方には合いそうです。
あとミュージカルであるおかげでセリフがゆっくりな点で、やはり意外と初中級者向けなのかもと思いました。十分口がついていけるスピード。
日常会話の練習を目的にするならもっと現代のお話の方が良いし当然ミュージカルじゃない方が良いのは間違いありませんが、クラシック映画と共に学べるフランス語は贅沢な感じがします。それに実用性だけが全てではないですしね。
テキストは、改めて解説もかなり細かく良いテキストだな~と思いました。もっとこういうシリーズがあればいいのに。
興味ある方は是非、試してください。
A bientôt !
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