Coucou ! ほたです。
以前に初心者向けでおすすめのフランス語本をいくつか紹介しました。
その時紹介した本たちはこちら↓
今日は初級~中級の方に私が心からおすすめしたい、Aki Shimazaki(シマザキアキ)さんの小説シリーズを紹介します。
こんなにフランス語で読んで夢中になれる本があるなんて、しかもそれが日本人の手によって書かれているなんて!と私に衝撃を与え多読の概念を変えてくれた本です。
小説の概要、作者の紹介、フランス語レベル、見どころ、本が買える場所、また既にファンの方にインタビュー記事やおすすめ関連サイトなど詳しくまとめたので参考にしてみてください。
フランス語レベル
仏検など試験に向けて多読したい方はもちろん、日常会話のフランス語を学びたい方にもおすすめします。
レベルは中級、あるいは初級を終えた方。
最初は辞書をたくさん引いても3冊ほど読む頃には慣れて物語に没頭できると思います。
本に書かれてあるフランス語って書き言葉だからあまり会話には役立たないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。
登場人物たちの複雑な心の機微を描きながらも使われるフランス語はごくシンプルなので、私はむしろこの本から沢山の表現を学び日常会話でも使っています。
会話部分はもちろん主人公の独白部分も普段使いできるフランス語の宝庫ですよ。
作者について
彼女はメディアであれこれ語るのは好きではない為本当に情報が少なくほとんどWikipediaしかありません。
ひとまずそこからざっと要約しますと、
【1954年岐阜生まれ。26歳の時カナダへ移住しその後モントリオールに定住。40歳から学校でフランス語を学び小説を書き始める。
フランス語で書いた最初の小説 Tsubaki はモントリオール図書大賞最終候補作となる。
その後も様々な賞を受賞し、現在も現役で1~2年に1冊のペースで執筆中。】
彼女としては「書きたいものがあれば書ける」そうですが、異国の言葉で本を書き何度も受賞、しかも40歳でフランス語を勉強し始めて最初の作品はわずかその4年後!
フランス語学習者からするとすごすぎる存在です。
小説の概要
作品は全て5部作で1シリーズになっています。1冊は大体120~160ページほどで、慣れると毎日30分の2週間程度で読めるようになりました。
この5冊は一応それぞれ独立したお話のため、どの巻から読んでも問題はありません。
しかしこの5部作の中の人物はそれぞれ遠からず繋がりのある人たちで、例えば1巻がある男性の話なら2巻ではその妻、3巻では上司や母親…という風に毎回物語の主人公が移り変わっていきます。
これが特に面白い要素で1巻では知り得なかった他の人物の心情が分かったり、同じ事件を別の人物の視点から見たり、ある意味謎解きのような要素も感じられるのです。
なのでどこから始めてもOKですが、シリーズ内の5冊は通して読むのがおすすめ。
これまで発行されたものはWikipediaで年代順に確認できます。シリーズごとの繋がりは全くないので『アザミの影』→『秘密の重み』→『大和の心』というように進んでも大丈夫です。
見どころ
登場人物は何かしら人に言えない悩みや問題を抱えていて、それが段々と周りの人たちにも作用し人間関係が錯綜していく…この心の機微や人間模様が繊細で本当に引き込まれます。
一つの世界線を夫の目線、妻の目線、親の目線、子供の目線、愛人の目線…とそれぞれの人生と心情で追い、その視点の変化を楽しむことが出来るのも5部作の醍醐味。
途中はジェットコースターのように思いがけない急展開があり、結末が読めないハラハラ感があります。問題は必ずしもすっきり解決しないまま物語が終わることも多いのですが、そこがまたじわじわと考えさせられる余韻を残します。
私は涙が出ることが何度もありました。
しかもお話は鮮やかな色が目に浮かぶような洗練された美しさがあります。
小説のタイトルはいつも花(たまに動物)の名前になっておりそれがその巻におけるキーワード。タイトルにちなんだ表紙の美しさもまたおすすめポイントです。
本が買える場所
私は最初メルカリで購入し、それ以外の巻は Amazon で海外取り寄せしました。
~~9:9~~という売り手が5冊セットでかなり安く販売していて買ったのですが、一度なかなか届かず不安を覚えました(結果数カ月も経って届いた)
Hello Japan ! という業者は発送がかなり早く個人的には満足!
海外発送はどうも心配が付きまとうので全く保証は出来ませんが、一応ご参考までに。
まず1巻を読んでみたい方は TSUBAKI(椿)から。一番の衝撃作です。
私が買ったのはアマゾンの第1、第2シリーズのセット販売です。
個人的な所感
シリーズごとの所感も少し書き残しておきます。テーマや一部内容に触れますので未読の方はご注意ください。
・最初のシリーズ Le poids des secrets(秘密の重み)はタイトル通り始終重く、でも一番インパクトがあります。戦時下が舞台であり、原爆投下の描写や「親殺し」「兄妹同士の愛」というテーマが読み終わった後も心にずしっときます。
・第2シリーズの Au cœur du Yamato(大和の心)もたくさんの苦悩はありますが第1シリーズからは少し和らいだ感じ。1冊完結型とはいえ、一体どういうことなの?!と次々巻を進めたくなるようなミステリー要素も強く感じます。結婚とは、夫婦とは何なのかを一番考えさせられました。Yamabuki 山吹 は始終とても美しいです。
・第3シリーズの L’ombre du chardon(アザミの影)は打って変わってとても現代的。特に Suisen 水仙 は今までと違う全く感情移入できない所謂イヤな奴が主人公で、ポップで笑える感じがありました。個人的には 一番好きな巻の Hôzuki 鬼灯から Fuki-no-tô ふきのとう の流れが本当に感動的で切なくなります。
・新シリーズはまだ Suzuran 鈴蘭 と Sémi 蝉しか読んでいませんが、姉妹の確執、許されない恋、認知症…など爽やかさを残した重めなテーマで相変わらず始終ハラハラでした。Wikipediaでは情報が更新されていませんが、すでに Niré 楡 が2022年、No-no-yuri 野の百合 が2023年に発行されています。
作者インタビュー
ここからはファンの方向けに。
オファーの4年後に承諾されて実現した貴重なインタビュー記事あります。
作品を通さない彼女の直の言葉はとても貴重です。メディアが好きではないその理由がこの部分。
«Je ne veux pas avoir à expliquer comment on doit lire mes histoires. Je préfère que les lecteurs décident.»
「この本はこういうテーマでこういうのを表現したくて」という説明をして読者に先入観を持たせるのではなく、読者が感じるままに読んでほしいということ。
ここでも詳細は語られないのですが、3シリーズ目の L’ombre du chardon(アザミの影)の2巻目 Hôzuki(鬼灯)について少し触れています。(何でこの巻の話かというと、おそらくこのインタビュー年の2015年が Hôzuki 発表の年だったから)
ここでは軽く要約してご紹介します。ネタバレあり。
ミツコのストーリー Hôzuki は、40年前に作者自身が聞いた「手荷物ロッカーに捨てられ死亡した赤ちゃんが見つかった」という話からアイデアを得ているそう。
話のテーマは l’amour maternel「母の愛」。
物語のテーマは最後まで読まないと分からないようになっており、普段は書きながら結末を考えています。
それは最初からテーマを決めてしまうと物語が深みを失い退屈になってしまうから。時には最初から話を書き直すこともあって、Hôzuki も完成まで3〜5回書き直したと明かしています。
彼女にとって「作家」とはただ作品を書く人なので作家として「売れたい」というような気持ちは実際あまりなく、純粋に書きたいものがあるから書き続けているようです。
いまも現役で毎年出版され続けていることからも、その情熱を感じますね。
関連サイト
作品のざっくりしたあらすじをフランス語で読むにはこちらがおすすめです。
色んな本を紹介しているフランスのサイトで、各巻ごとあらすじ概要があるので読んでみると面白いかも。
更に第一巻の Tsubaki について語っている france.tv のビデオがあります。
フランス語小説を探している方はぜひ読んでみてください。
A binentôt !
コメント
彼女の貴重なインタビューを有難うございます。
ネタバレのところは読まないようにしました。
私は大和シリーズしか読んでないのですが、Mistuba におけるYoko の人生が哀れで仕方なかった。夢でうなされるぐらいだった。ところでTsukushi で、その後の彼女の人生を知ることになり、うーんとなり、最後でああーてなりました。伏線のうまさ、どんでん返し、すごいです。そう考えると最後のYamabuki は予想通りというか、まあ、それも普通の人の人生って感じで、結局はそんなものなのかと。
Tsukushi の中で、ただの金持ちの夫人だと思っていたYoshiko さんの三島由紀夫とヘブライ語の件はびっくりしました。英語とフランス語がちょっとできるくらいで浮かれていてはいけないってことですね。
Hélène様
こんにちは。全くコメントを見ておらずかなり返信が遅れ申し訳ございません。記事を読んで頂きありがとうございます!シリーズ内で全てが繋がっていく感覚良いですよね◎どの巻にも言えることですがドラマチックで壮絶な人生を追体験できることがこのシリーズの魅力だと思います。三島由紀夫とヘブライ語の件はもう全く記憶の彼方なので、ちょっと読み返してみますね…!どうぞよいお年をお迎えくださいませ。